歴史
静止画をデジタルで記録するいわゆる「デジタルカメラ」の前に、アナログ記録を行う「電子スチルビデオカメラ」という製品群が存在した。これは、2インチのビデオフロッピーディスクを記録媒体としてこれにアナログFM記録する電子カメラで、1986年~1988年頃に販売されていた。現在の「デジタルカメラ」を単に「電子スチルカメラ」と呼ばないのは、このアナログ記録の製品との混乱を避けるためである。
画像をデジタル方式で記録する初めてのカメラは1988年に富士フイルムから発売された「FUJIX DS-1P」である。 画像を記録する媒体にフラッシュメモリを初めて使用したのは1993年に同じく富士フイルムから発売された「FUJIX DS-200F」である。 デジタルカメラの一般向け普及の口火を切ったのは、1995年にカシオから発売された初のデジタルカメラ「QV-10」である。液晶搭載で6万円台の価格を実現して大ヒットし、デジタルカメラが市民権を得た。これはカシオが以前フロッピーディスク形式で保存する電子スチルビデオカメラを発売したものの、ライバルとして同価格で8ミリビデオが登場したため売れ残り、これに苦慮し再開発を行った結果とも言える。QV-10の成功を皮切りに多くのメーカーが一般消費者向けデジタルカメラの製造・開発に乗り出した。QV-10発売の二ヶ月後にリコーからDC-1が発売された。このDC-1には動画記録機能があり、その記録方式として初めてJPEGの連続画像(後にMotion JPEGと呼ばれる方式)を用いた製品であった。その後、1999年末頃から始まった高画素数化競争や、キヤノンのIXY DIGITALなどの大ヒットによるコンパクト化競争など、市場拡大を伴った熾烈な競争により性能は大幅に上昇し、価格もフィルムカメラ並みとなった。当初は、画質の問題や使い勝手から、デジタルカメラに疑問を持っていた消費者も、画質と使い勝手が改善されるにつれて抵抗がなくなり、フィルムカメラからデジタルカメラへの置き換えは確実なものになりつつある。
また、報道関係やプロカメラマンの間でもデジタルカメラは急速に普及した。業務用のデジタルカメラは古くから存在していたが、それらは高画質でも大型で可搬性のないものであったり、一眼レフタイプでも専用のレンズ群が必要で価格も数百万円になるなど、一部の大手報道機関などが少数保持しているだけの特別なカメラであった。しかし、1998年から1999年にかけてキヤノンやニコンなどが、従来型のレンズをそのまま利用でき、かつカメラとしての完成度も高いデジタル一眼レフを相次いで投入、デジタル一眼レフの完成度は急激に向上し、価格も100万円を切るようになった(2008年現在では、エントリークラスの機種なら標準ズームレンズ付きで5万円台で手に入るものもある)。2000年のシドニーオリンピックなどを契機として報道各社を中心にデジタルカメラの導入は急激に進んだ。フィルムの現像やデジタル化の手間がなく、フィルム代もかからないためコスト的にも優れたデジタル一眼レフは、現在ではフィルムカメラを駆逐して、報道カメラの中心的な存在となっている。
2000年頃から光学機器メーカー、電気機器メーカーが一般向けデジタルカメラ事業に続々と参入し、価格や性能の激しい競争が起こった。安価なトイカメラを中心に台湾や中国、韓国等のメーカーが加わり、さらにはカメラ付携帯電話も加わって、店頭では激しい販売合戦が展開されている。現在では多くのメーカーが赤字を出すなどして撤退しており、業界の再編が進んでいる。
- 1994年2月 - アップル、QuickTake 100を発売。内蔵1MBのフラッシュメモリに記録する方式、35万画素。
- 1995年3月 - カシオ QV-10を発売。25万画素。
- 1995年5月 - リコー DC-1を発売。41万画素、後にMotion JPEGと呼ばれる連続JPEG画像記録をサポートする。
- 1996年3月 - エプソン CP-100を発売。35万画素。
- 1996年7月 - キヤノン、PowerShot600を発売。57万画素。
- 1997年 - ニコン、COOLPIXシリーズ発売開始。
- 1998年 - オリンパスCAMEDIA C-1400 が、カメラグランプリの記者クラブ特別賞に選ばれる。デジタルカメラが受賞するのは初めて。
- 1999年 - ニコン、デジタル一眼レフカメラD1を発売。価格は65万円と高価であったが、プロ向けとしては低価格であった為、その後のプロ市場でのデジタルカメラ普及につながった。
- 2000年 - 世界初のデジタルカメラ内蔵携帯電話「J-SH04」がJ-PHONE(現ソフトバンクモバイル)より発売される。以後の携帯電話はカメラ内蔵が主流となる。キヤノンがIXY DIGITALを発売。
- 2001年11月 - 松下電器産業が「LUMIX」ブランド1号機「DMC-F7」を発売し、以後デジカメ分野へ本格参入。
- 2002年 - キヤノンのEOS-1D がデジタルカメラとして初めてカメラグランプリを受賞。以降、カメラグランプリの受賞はデジタル一眼レフが続く。
- 2002年9月 - オリンパスとコダックによってデジタル一眼レフカメラ専用の共通規格フォーサーズシステムが提唱された。
- 2005年 - 松下電器産業がオリンパスと、ソニーがコニカミノルタと、ペンタックスが韓国サムスン電子グループのサムスンテックウィンと、一眼レフデジカメの開発で提携することを発表。また、京セラのデジタルカメラを含めたカメラ事業(京セラ、コンタックスブランドとも)からの撤退が報じられた。今後光学機器、電気機器メーカー双方の業務提携による競争の激化も予想されよう。
- 2006年 - 競争は一層激化し、ニコンはデジタルカメラに生産資源を集中し、フィルムカメラのラインナップを大幅に削減、コニカミノルタはデジタルカメラを含むカメラ・フィルム・写真関連事業全般から撤退、一眼レフカメラ部門をソニーに譲渡した。コダックも消費者向けデジタルカメラの自社生産から撤退するなど、業界の再編も進んでいる。